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炎の人☆大阪7月18日、19日 [舞台全般]

炎の人.jpg

皆さま、こんばんは。今日も夜遅くに雨です。
お家でPCに向かえない今日この頃で、他の皆さんのところにもお伺いできず、すみません。
なんとか今月の観劇記録だけでも残しておきたいなと。
まずは「炎の人」から。

【観劇日】7月18日 2階A列センター、19日 1階S列上手、シアターBRAVA! 
 
【作】三好十郎「炎の人 ヴァン・ゴッホ小伝」 【演出】栗山民也
【キャスト】市村正親(ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ)、益岡徹(ポール・ゴーガン)、荻野目慶子、
  原康義、さとうこうじ、渚あき、斉藤直樹、荒木健太朗、野口俊丞、保可南、
  中嶋しゅう、大鷹明良、今井朋彦、銀粉蝶

 
いっちゃんがゴッホ役をすると聞いてから、絶対に観たい!と思っていました。
チラシの写真も気合が入っているというか、恐いくらいにゴッホで思い入れが感じられる。
この作品は、いっちゃん自身が随分前からやりたかったようなのです。

ともかく、凄い!の一言。特に二幕、アルルでのゴッホ。
狂っていく様がリアルというか、ゴッホは本当にこんな風だったのではと感じるというか、
まるで目の前にゴッホがいるようでした。ゴッホのことをそんなに知りもしないのに。
なんていうか、体全体から妖気が出てました。目が恐いの~。
それが遠目からでもわかる。
何日か経った今もゴッホのことを考えると、あの目が浮かびます。

全体的に重く、観終わるとぐったりするくらいパワーを持っていかれる、
そんな舞台でしたが、でも、観てよかったと思う。

ゴッホの狂気だけでなく、ただひたすら絵を描く、子供のような純真さ。
絵に対するまっすぐで一途な思い。その思いが強過ぎて、我を忘れてしまう。
市村ゴッホには観ている者を惹きつけるオーラで溢れていました。

他の役者さん達も皆さん素晴らしかったです。

お一人で何役もされている方が多かったのですが、銀粉蝶さんも一人三役をされていて、
それがまるで違う人物像なのにそれぞれを見事に演じられてしました。
初日は2階だったのもせいもあって、最初の場面の老婆が彼女だとは気付かなかったくらい。
パリでのタンギィの妻役が大好きです。大鷹明良さんのタンギィ役もよかった。
ゴッホがタンギィを描く時の二人の様子、それを部屋の隅で微笑みながら見詰める妻。
大好きなシーンです。銀粉蝶さんが椅子に座っている様子は一枚の絵のようでした。

荻野目慶子さんも同じく一人で三役。
シィヌとラシェルというまるで違う二人の娼婦ですが、どちらも見ていて切なくなる。

ゴーガン役の益岡徹さんはテレビなどでもお馴染みの味のある役者さんですが、
いっちゃんが凄過ぎて初日はちょっと物足りなく感じました。
だからといって、他にどの役者さんならいいのか?ダーリンと二人で勝手に考えたものの浮かばず。
翌日のゴーガンはよかったです。前日よりも心に迫るものがあった。

ゴッホの弟テオドール役の今井朋彦さんも好きな役者さんなんですが、
とても素晴らしかった。兄を慕う、たまには不平もこぼすけど、気のいい弟。
本当の兄弟のようでした。

全体を通して、プロの演技をしっかりと堪能させていだいた、そんな舞台。
カテコでの皆さんの充実したお顔が忘れられません。お疲れさまでした。ありがとうございました。
そのカテコで、いっちゃんと益岡さんががっちりと抱き合われていたのが印象的です。
最後はいっちゃんが益岡さんの背中におぶさったり、その次は逆だったりと(重そうでしたが、笑)
とても嬉しそうにされていて、見ている私まで幸せな気持ちになれた。

栗山民也さんの演出は初めて?だと思いますが、好きだなあ。
二幕のゴッホの心の叫びはもう少し生でもよかった気もしますが、ああいう演出もありかなと。
ゴッホを意識されているせいもあるかでしょうけど、それぞれのシーンが絵画を彷彿させる。

ところで、ゴッホはかなりの書簡を残しているんですね。
今まで知らなかったゴッホのことを知ることができたのもよかったと思います。

順番が逆になりましたが、最後にエピローグの「詩」。

耳を切り落とした後の晩年のゴッホの様子を郵便配達夫のルーランが語る。
その最後に、作者の三好さんがゴッホに語りかけるような「詩」が朗読される。

   ヴィセントよ、
   貧しい貧しい心のヴィンセントよ、
   今ここに、あなたが来たい来たいと
   言っていた日本で
   同じように貧しい心を持った日本人が
   あなたに、ささやかな花束をささげる。
   飛んで来て、取れ。              ~  「炎の人」パンフレットより ~

最後は、拍手をおくる、飛んで来て、聞け、拍手をおくる、と締めくくられる。
舞台の上はそれまでとはがらりと変わって、穏やかなあたたか光に溢れている。
その中で、静かに黙々と絵筆を動かすゴッホがいる。いつの間にか涙ぐむ。

ただ悲しいのとは違うのね。
三好さんの思いが込められた詩を聞きながら、穏やかな表情で無心に絵を描くゴッホを見ていたら
魂が浄化されていくような、そんな気がしたの。

それまでの暗さの中から明るい光の中に心が解き放たれる。
激しい人生だったと思う。そんなゴッホの絵を見たくなりました。

 

・・・エピローグの「詩」の全文をご紹介。長いです。
出典はこちら(↓)から。 ※著作権に関しては下記電子図書館内の説明をご参照ください。
インターネットの電子図書館、青空文庫へようこそ。 三好十郎著「炎の人 -ゴッホ小伝-」

   それから四日たって精神状態が完全に元にもどった。
   ゴーガンは去り、テオが駆けつけて来、ルーランは毎日花を持って見舞いに来る。
   二週間たつと、医者は絵を描くことを許した。そしてまた描き出した。

   それから二年
   また病気が出て
   二度三度と入院し、
   少し良くなっては退院するが、
   また自ら望んでサン・レミイの脳病院の三等に入院し、
   やがてオーヴェルの医師ガッシェのもとに移り、
   一八九〇年、明治二十三年七月、
   オーヴェルの丘で自ら自分の腹に
   ピストルの弾をうちこむまで
   あなたは描きつづける。

   あなたの頭は時々狂ったが
   あなたの絵は最後まで狂わない。
   脳病院の庭で、発作の翌日描いた絵でも線と色はたしかだ。
   絵はあなたの理性であり、
   絵はあなたの運命であった。
   運命のまにまに、あなたは燃えて白熱し、飛び散り、完全に燃えつきた。
   最後の時にあなたはテオの手を掴んで
   もう俺は死にたいと言った。
   もう俺は死にたいと……

   ヴィンセントよ、
   貧しい貧しい心のヴィンセントよ、
   今ここに、あなたが来たい来たいと言っていた日本で
   同じように貧しい心を持った日本人が
   あなたに、ささやかな花束をささげる。
   飛んで来て、取れ。

   苦しみの中からあなたは生れ
   苦しみと共にあなたは生き
   苦しみの果てにあなたは死んだ。
   三十七年の生涯をかけて
   人々を強く強く愛したが
   やさしい心の弟のテオをのぞいては
   誰一人あなたを理解せず、愛さなかった
   あなたはただ数百枚の光り輝くあなたの絵を
   世界の人々にえがき贈るだけのために
   大急ぎに急いで仕事をして
   生涯を使い果した。
   絵を描く時の歓喜だけがあなたの生甲斐で
   あとは餓えと孤独と苦痛ばかりであった。

   そして、あなたの絵は
   今われわれの前にある。
   これらはわれわれに、いつも新しい美と
   新しい命への目を開いてくれ、
   貧しく素朴なる人々に
   けなげに生きる勇気を与える。
   このような絵を
   あなたが生きている間に
   一枚も買おうとしなかった
   フランス人やオランダ人やベルギイ人を
   私はほとんど憎む。
   ことにはまた、こんなに弱い、やさしい心と
   こんなに可哀そうに傷つきやすい魂を

   あなたが生きている間に
   愛そうとしなかったフランスの女とオランダの女とベルギイの女とを
   私はほとんど憎む。
   ほとんど憎む!

   日本にもあなたに似た絵かきが居た
   長谷川利行や佐伯祐三や村山槐多や
   さかのぼれば青木繁に至るまでの
   たくさんの天才たちが居た
   今でも居る。
   そういう絵かきたちを、
   ひどい目にあわせたり
   それらの人々にふさわしいように遇さなかった
   日本の男や女を私は憎む。
   ヴィンセントよ!
   あなたを通して私は憎む。

   さもあらばあれ、ヴィンセントよ!
   あなたの絵は今われわれの中にある。
   貧乏と病気と、世の冷遇と孤独とから
   あなたが命をかけて、もぎとって
   われわれの所に持って来てくれた
   あなたの絵は、われわれの中にある。
   それならば、われわれも、もう不平は言うまい。
   それならば、あなたも、笑って眠れ。
   あなたは英雄ではなかった。
   あなたは、ただの人間であった。
   人間の中でも一番人間くさい弱さと欠点を持ち
   それらを全部ひきずりながら
   けだかく戦い
   戦い抜いた。
   だから、あなたこそ
   ホントの英雄だ!

   貧しい貧しい心のヴィンセントよ!
   同じ貧しい心の日本人が今、
   小さな花束をあなたにささげて
   人間にして英雄
   炎の人、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホに
   拍手をおくる!
   飛んで来て、聞け
   拍手をおくる!


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kyoko

東京ではとっくに終わっているのですね・・・。
kanonさんのブログを読んで・・・観たかったといつもながらに思う私です。
・・・人任せではいけませんね・・・。



by kyoko (2009-07-30 16:50) 

くりっぴ

観劇していないので、よくわからないですが・・・
どっちかというとゴーギャンを好きで、その後にゴッホの絵をみたという順番だったので、ゴッホが主役なんだ・・・と思ってしまいました。

恋人に肖像画を見せて、耳が似ていないといわれて耳を切ったといわれるゴッホの人柄に驚いている私です。
聞いた話なので本当かどうかはわかりませんが・・・
by くりっぴ (2009-07-31 22:35) 

ぶるです

いっちゃん!!  見たかったぁ~!!
以前に、凄く思い入れのある役
と、云ってはったし・・・
「時、既に遅し」です。後悔・・・
by ぶるです (2009-08-04 21:03) 

kanon

皆さま、こんばんは。ご返信が遅くなってしまって、ごめんなさい。
nice!とコメントをありがとうございます♪
by kanon (2009-08-09 01:08) 

kanon

★kyokoさん、こんばんは。ありがとうございます♪
ご返信が遅くなってしまって、すみません。

そうなんですよ。東京から始まったので。
始まる前に紹介すればよかったんですが。。。
東京はいろんな公演があるので、いいものに出会える機会も多いと思います。
劇場へおいでませ~、です。^^

★くりちゃん、こんばんは。ありがとさんです!
ご返信が遅くなって、ごめんなさい。

ゴーギャンが好きなのね。
なんとなくですが、くりちゃんはゴーギャン!ていう気がします。
私にはゴッホが主役の方がしっくりくるかな。

ゴッホが耳を切ったという話にはいろんな説があるよね。
ゴーギャンがゴッホの耳を、、、という新説もあるようです。
(真偽はわかりませんが。。。)

★ぶるさん、こんばんは。ありがとうね。
観ようかなと言っていたので、どうしたのかな?と思ってました。
本当に思い入れがあるようでした。迫力だったよ~。

by kanon (2009-08-09 01:13) 

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